CRJ-tokyo weekly chart初登場にして1位をかっさらい、そのまま3週連続1位の座にいすわり続けた謎の匿名アーティスト、Mr.Tobacco。その正体を確かめるべく、CRJ特派員は大阪に向かったのであった!そしてMr.TobaccoをリリースするSPOTLIGHT recordsオーナーの松竹氏に接触。その謎に包まれたベールの内側を聞き出すことに成功した!
   
松竹氏がインタビュー中言っていたことですが、Mr.TobaccoはSPOTLIGHTワールドへの入り口であって、そこから決してエレクトロ(ニカ)だけではない、さまざまな背景を感じとって欲しいということです。それは松竹氏がジャムバンドに興味があるということや、SPOTLIGHTのイベントでのライブなどにつながると思います。手っ取り早くSPOTLIGHTワールドを体験するには、ミックステープを手に入れることをお勧めします。特に僕が気に入っているのはMatsu & Takeによるvol.3“1985-1984”です。これは本当に最高なので、ぜひ聞いてみてください!
   
txt:鎌田 / photo:tomy
 

 

 

まず、Mr.Tobaccoという名前の由来を教えてください。
松竹■
あー大した話じゃないんだけどね、これが。匿名ってところにもかかわってくるんだけど、Mr.って名前が、大勢でやってる感じがしなくて、一人でやってる感じがして。Mr.なんとかにしたいねって前々から言ってたんだけど、でもMr.何がいいかなって話は何人かで集まって考えた時に、いいのが見つからなくって。そこで僕がてきとうに、ここにタバコがあるから、じゃあMr.タバコってことで(笑)、みんなたぶんMr.タバコって名前はいややと思うから、みんなMr.タバコよりいい名前を考えていこうよと。でやり始めたらそれを超えるものを誰も出してこれなくって。じゃ、それでいいんじゃんという感じで、それでそのまま馴染んでしまったってのが名前の由来かな。
なぜ匿名ということでCDを出されたのですか?
松竹■
SPOTLIGHTレーベルでCDを出す第1弾だから、これからこういうのが出てくるレーベルだっていう入り口になってしまうから、僕のソロを出して入り口を狭めてしまうのはどうかなあって。それで仲間たちでコンピレーションを出そうっていうのは一番簡単な答えなんだけど、せっかく共同作業できる環境にあったから、じゃあいっしょにやろうってのがあったんだけど、そこで例えばこの曲は誰ってやっちゃうとコンピになっちゃう。でもこれを僕と誰と誰のユニットですって言っちゃうと、雑誌のレビューとかもそのことしか書いてなかったりするし。
そういった意味では、リョウ・アライさんの名前はCDに書いてあるから、レビューとか読んでると、リョウ・アライ、リョウ・アライ...というのも多いです。
松竹■
実際、アライさんはこれに参加してるかもしれない(笑)んだけど、あの人はすごい幅が広くて、でも基本的にリョウ・アライでやるときはsoup-diskのレーベルカラーに合わせてやってる。それでもこれでリョウ・アライって名前があると、Mr.Tobacco=リョウ・アライっていう認識の人も出てくるかもしれない。だからといって100%隠してしまって、名前当てゲームみたいになっちゃうと、なんかそれはいやらしい。それで匿名のコラボレーションって言ってしまえば、レーベル第1弾としての幅の広さを保てるかなあって。
曲名もおもしろいですね。
松竹■
曲名...みんなで喧喧諤諤と。そのタイトルはないんじゃないの?とか(笑)。そのEndless Nightってタイトル見たら、関西人なら兵藤ゆきが頭に浮かぶっていう(笑)。 え、ぜんぜんない?それわからん?
わかんないです(笑)。
松竹■
え、兵藤ゆきのEndless Nightっていう番組知らない?あ、やっぱ知らない世代なんや。いやね、僕がそれを知ってるギリギリの世代なんだけど、東京のオールナイトフジの関西版ということで、土曜の深夜に兵藤ゆきのEndless Nightって番組があって。関西のやつはみんな知ってたんだけど、アライさんは東京の人だから、そんなこと何も知らずにEndless Nightって曲名出してきて(笑)。だから30前後ぐらいの関西出身の人にEndless Nightってアルバム出しましたって言うと、え?兵藤ゆきでてんの?って絶対言われるし(笑)。
京都のメトロで行っているイベントSPOTLIGHTについて教えてください。まず、一緒にやってる人たちとは、どういうきっかけで出会ったんですか?
松竹■
僕が94年に大学で大阪に出てきたんだけど、あの時代はテクノが初めてガツンときた時期で。みんなちゃんとクラブに行ってた時期で、僕もそういうの全部行ってたから、(クラブに来ていた)メンバーの顔がわかるから、小さいイベントやったりする時に、同じ服屋さんに行ってたとか、そういう話から実は音楽やってるという話になって、それで知り合ったメンバーと一緒にイベントやったりして。それこそ最初のうちはテクノっていうだけでもっといろんな人たちとやってたけど、音楽的な方向性とかでだいたいいくつかのグループが出来てきて、それでずっと一緒にやってるって感じかな。それこそ東京のSound Channelとかあのへんのやってる人とか、ずっと一緒にやってたりしたし。
テクノのイベントで集まったというのは結構意外な感じがします。
松竹■
でも見る人が見れば僕らバリバリテクノ出の人間だから。やっぱりそこから始まってるから、フロアを無視したりとか、そういうことができなくって。家で楽しんでくれよとか、そういうクールなことができない(笑)。テクノのDJがこうやってる(EQをいじるフリをして)だけで一晩中続くようなイベントいってたんだけど、最初は物珍しかったから(それでもよかったんだけど)、でもみんなそれでいいのかって感じになって。みんなが同じようになったから、なんかそれじゃおもしろくないなって方向になって。だからこのSPOTLIGHTなんかはDJがDJらしくなくて、もうDJの時間をどんどんなくしていこうってイベントだから。例えばずっと曲が続いているけど、それはヤベミルクがドラムマシーン鳴らしてて、僕はシンセひいてて、横で誰かがサンプラー鳴らしてたりして、それだけで30分ずーっと踊らせたりする。できるだけレコードを使わずに、ステージでちゃんとパフォーマンスをする。だからテクノから始まって、ロックバンドがやってることと同じ方向に向かおうとしてるって感じかな。毎週スタジオに入って練習したりとかしてる。どうせやるなら、それぐらいちゃんとライブをやりたい。
このイベント、1500円で、1drinkと1cakeなんですか?(笑)
松竹■
そのヤベ君ってのがケーキ職人やってことがあって。今もパン屋で働いてて。めちゃめちゃプロのちゃんとした、採算度外視ですごいいい材料買ってきて作ってる。
京都とか、その辺りのレーベルの人たちとはみんなつながってる感じですか?
松竹■
Childiscの人たちとかはChildisc以前から知ってる人とかいて。だからもうChildiscはねー、やられたなーっていうか。あ、この人先に出されたとか結構いっぱいあって(笑)。ヤベ君にしてももうずっとChildiscから出してるし。でもあの辺りの人たちは家にいちゃうから、クラブとかでライブとかもぜんぜんしないし。その辺の人たちが、せっかくそういうことできるのに家にいたままだともったいない。だからといって誰もひっぱり出そうとしないから、常にそういう人たちが月1回くらいライブをどこかでやってるって環境を無理やりにでも自分たちで作らないと、シーンもなにもないからね。?
作ってる人たちも家で作って、聞いてる人たちも家で聞いてるっていう。
松竹■
特にそういうジャンルだし。実際音響系のイベントとかあるんだけど、レコード屋さんの音響系のコーナーをどさっと持ってきてDJやってるようなイベントじゃない。最近でこそIDMとか音響系とかのレコードでDJする人が出てきているけども、やっぱし僕らちがうんやね。音響系じゃないしね、僕ら。何ていうのかな、もっとPOPSをやりたいんやね。実際IDMとかあんまり大してかかんないし。今でこそオウテカで踊ることが当たり前になってきたけど、こういうこと言っちゃうのはいやらしいけど、3年ぐらい前にヤベ君とかがオウテカとかかけてDJしてたし、それをいまさら言われてもなーってのも結構あって。音響系なら、そういうので踊れるのも70年代からいっぱいあるやんか。だからオウテカばっかりかけずにその70年代とか、80年代のその当時のかっこいいシンセの使い方してる音楽とかをもっと一緒にかけたらおもしろいんじゃないの?っていう風に僕らは思ってて。
それはSPOTLIGHTのMixtapeにも通 じるものがありますね。Matsu & TakeのミックステープのCameo,Mr.oizo,The Timeとか、Clatterbox,Terence Trent D’Arby,Dr.Jeckyll & Mr.Hydeっていうつなぎは、これは聞いたらほんとに最高ですね。
松竹■
これも全部80年代だったらわかりやすかったかもしれないんだけど、このつながりこそがSPOTLIGHT。僕はこれは聞いたらつじつまがあってると思う。だからClatterboxの次にDr.Rockitをかけちゃうのは誰にでもわかることなんだけど、こういうのも昔はあったし、これはこれでノリが違っていいんじゃないの?ってことをやりたい。
これは全部作業はパソコンでやってるんですか?
松竹■
パソコンの中で曲をつなぐんじゃなくて、つなぐのは自分でやって、それを編集していくって感じかな。アライさんのやつなんかぜんぜんDJミックスって観念がなくって、1曲づつ全部リミックスして、曲はしっかり最初から最後までバンって終わって、でも途中は全部ムチャクチャになってるっていう。ミックスじゃないっていう(笑)。エディットテープとか(笑)。でもミックステープってことでお願いしたから、ミックスとリミックスのはざまとか、無理やり宣伝文句を考えて(笑)。
HPで見たんですけど、次のミックステープは全部アトム・ハートの曲ってかなりすごいですね(笑)。
松竹■
そうそう、いっしょにイベントやってるミキロフって名前でやってる久保君ってのが、アトム・ハートが今みたいにデジタルコラージュやる前の、アシッド作ってた時代から買ってて。92年から一応全部持ってるって言ってたから、数はすごい。でも一回3月ぐらいに完成してんけど、僕がボツにしてん。これじゃダメだって。今作り直してて、悲しい話やけど(笑)。
松竹さんはイるreメにも参加されてますね。アルバムが今度出るという話を聞いたんですが。
松竹■
うん。それを今作ってる。それは自分で言うのもおかしいんやけど、かなりすごい。
イるreメはすごく評価も高いし、レコード屋でもかなり置いてますよね。
松竹■
でも、やっと置いてくれるって感じやね。今までは本人たちが自分たちのお金で作ってて、流通 ぜんぜん通さずにやってて。実際最終的には評価高いけど、でもそんなに飛ぶように売れるわけではないみたいで。
でも結構試聴機に入ってますよね。
松竹■
うん。試聴機には入ってるし、ある程度とどく人には届いてると思うねんけど、でももっといろんな人を巻き込まないと。SPOTLIGHTにしてもそうだけど、地方の新星堂とかそのクラスまで行かないとほんとはすごくない。東京のHMVとかにあることはすごいねんけど、それと同じくらい地方のCD屋に置かれることもうれしいことで。だから、マニアックな人たちが聞いてくれるのはすごくいいことなんだけど、そこだけを見てやっちゃうと(いけない)。いま、マニアックな方ににぜんぶのシーンが向きつつあるじゃない。だからPOPな気持ちというか、人を振り向かせようというのは基本やね。
僕はMr.Tobaccoはエレクトロ(ニカ)経由でできたアルバムかと思ってたんですが、話を聞いてみるとかならずしもそうではないということに結構意外でした。
松竹■
いろんなものが同時進行にあって、結局その中で自分たちが一番形にできるのは、エレクトロって言葉だった。例えばレコードのポップに、ロック/テクノ/ブレイクビーツ/ラウンジっていれるのが流行ったけど、でも最終的にそんなことはいいからラウンジ聞こうよってことになる。で、いざ僕らはなんなのかとなると、テクノの要素もあるし、ヒップホップかもしれないし、イベントではロックもかかる。でもそれを全部並べちゃうとただの混沌だから、僕らは開き直ってエレクトロっていうようにしてる。でもフレッシュ!!とかピース!!とかはやらないけど(笑)。
最近気になってるアーティストを教えてください。
松竹■
僕自身は、今はジャムバンド。ソウライブとかメデスキ,マーチン&ウッドとか、あの辺の人たちがやってることの方が今はおもしろいと思う。でも僕が好きなジャムバンドはメデスキ,マーチン&ウッド方面 の実験をする方のジャムバンドじゃなくて、それよりはチャーリー・ハンターとかソウライブとか、普通 にただ3人で演奏しているだけやのに、ビートの出し方とか、フレーズのループをどう使うかとかがすごい。
オーガニックグルーブとかは行きました?
松竹■
あー行った行った。それのメデスキ,マーチン&ウッドのやつに行ったんだけど、それはめちゃめちゃよかったね。たぶん今年のベストライブやと思う。でよろこんでCD買ったら、ぜんぜんよくなかった(笑)。だから最近はジャムをそのままレコードにしてる人たちのはあんまりおもしろくない。それよりはレコードでは普通 にファンクをやってるんだけど、ライブはそれを10分20分やってるような、ギャラクティックとかあの辺のバンドのレコードとかをよく聞いてる。あ、そうだ、思い出した。一番よかったのは、イン・シンク(笑)。ホントにかっこいいよ、もう。今年のベストアルバムだと思う。エレクトロとかをすごいしっかりよくわかった人がトラック作ってて、エディットとかもすごくわかってやってて、でもそれをちゃんとPOPSに落としこむっていう。アトム・ハートがリミックスしたような曲がオリジナルなんだよね。声とかめちゃめちゃエディットしたのが後ろでガーッとなってて、しかも曲の終わりがみんなでヒューマンビートボックスやってるのがガシガシエディットかかって、それで普通 に終わるっていう。
(笑)アルバムぜんぶちゃんと聞けるんですか?
松竹■
いや、そこがちがうくって(笑)。8曲目まではこれは素晴らしいなあって家で聞いてたんだけど、9曲目からはなんかこう、ガクッと。最後の曲だけはまたよかったんだけど、そのあいだ4,5曲ぐらいさえなかったらねぇ。それでもやっぱりよくって、パックマンの曲サンプリングして作ったり、ゲームの音ばっかり飛び交ってボコーダーのコーラスが入ったりとか。めちゃめちゃよかったね、イン・シンク。
Mr.Tobaccoは海外の方にも流通 が決まったという話を聞きましたが。
松竹■
そう、Mr.Tobaccoは海外にも流通 が決まって。Mr.Tobaccoを作った時点で絶対海外に売らなあかんなあと思ってたから、海外には結構プロモを送ったんだけど、2,3ひっかってくれたとこがあって。karaoke kalkのボスとかも気に入ってくれて。あとデヴィッド・シャザムって人がミックステープとかを気に入ってくれて、日本語でメールを送ってくれたりして、アリガトウゴザイマスってタイトルに書いて(笑)。やっぱり外国に出さないとあかんと思う。日本だけ見てると狭い世界になっちゃうからね。
今後の活動を教えてください。
松竹■
イるreメのアルバムを今作ってて、それが今メインかな。あとは「イるreメ vs Mr.Tobacco」っていう12inchを考えてる。あとはECDのアルバムにイるreメチームとして参加して、それが年末に出る。あとはスマーフさんのアルバムに参加するってのがあって。そんなもんかな。
最後に一言を。
松竹■
うーん、なんやろね。僕もこういう時にエレクトロっぽくフレッシュ!!とか言ったらいいんだけど(笑)。
   
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